コロナと宿泊業

新型コロナウイルスによる経済的な影響が国内においても如実に出てきましたが、宿泊業に関しては2月から既に3ヵ月に渡り強烈な影響が出ています。2月は20%減、3月は50%減、4月は90%減といった形で、4月度はどのホテル、旅館もこれまで体験したことのない稼働率になっています。

特に、インバウンド客をメインとしていた京都の様子は異常な変わりようで、殆どのホテルや旅館が稼働ゼロに近く、実質休業せざるを得ないとの事です。町家を改装しての高級旅館や新しく建築中のホテルなども軒並み建設停止しているようで、ニュースに出ていない所で数多くのホテル運営会社(特に成長中のベンチャー)が今も破産手続きすらできずに潰れて行っているようです。

名古屋においてもインバウンド客は勿論の事、コンサートやイベントもありませんので国内観光客はおらず、更に出張ビジネスマンも皆無となり、ビジネスホテルの稼働は毎日10名以下の宿泊者がいるかどうかとなっています。

立地とホテル業態で明確となる顧客分類

とはいえ、立地やホテル形態によって多少稼働の壊滅具合の差が出ています。
これまで異常に稼働が高かった「都市×駅前」のビジネスホテルやカプセルホテルは一気に稼働が落ちました。唯一まともに稼働している(とはいえ50%ほどですが)のは大手チェーンのビジネスホテルか、感染者を受け入れているホテルのみです。

一方、「都市×郊外」、「地方×駅前」のビジネスホテルは、建設系や地場企業が一部動いてはいるので、都市の中心部よりは多少ましな状態です。(それでも稼働は30~40%ほど)

シティホテルに関しては、都市、地方に限らず、結婚式や会合などの宴会が出来ない為、稼働以上に厳しい状況です。シティホテルの売上構造の半分は宴会やレストランでの売上となるためです。

観光地の旅館やリゾートホテルに関しては、ほぼ稼働ゼロに近い状態です。逆に、非常事態宣言が出ている現状では、お客さんが多く入っている旅館やリゾートホテルがもしあったとしたらSNSで叩かれてしまう状態です。。

特に小規模旅館が連なって出来ている温泉街では、一人でも感染者が出れば風評被害によるブランド棄損や今後の影響が著しい為、温泉街の旅館組合としても泣く泣く地域全ての旅館の休業を決めている所が多いです。

民泊に至っては、インバウンドの影響だけでなく衛生面における不安からも今だけではなく、今後も引き続き厳しい状況になりそうです。

Withコロナでの宿泊業の在り方

非常事態宣言も延期される中で、今後解除されたとしてもワクチンや治療薬が出来るまでの1年以上は「With コロナ」をベースとしたサービスの在り方にシフトチェンジせざるを得ません。

1.出来る限りフロントでの接客時間を減らす(事前決済、キャッシュレス、オンラインチェックインなど)
2.お客様に1日1回の非接触型の検温を協力いただく
3.フロント前で密(行列)にならないように、入り口に誘導スタッフを配置する
4.客室清掃において、これまで以上に消毒の観点を追加する
5.食事の提供方法を工夫する

アメリカのホテル協会においても、「With コロナ」でのホテルの運営ガイドラインについて発表しています。
https://www.ahla.com/safestay

6月末以降の宿泊施設の存続

ここ最近、全国各地でホテルの建設ラッシュが相次ぎ、今年の4月オープンのホテルも多くありました。実際の需要自体はインバウンドを合わせてもそれほど増加していない中、過剰供給がこの3年ほどでどのエリアも起こり、宿泊単価の値下げや稼働の奪い合いが激しく起こっている最中、今回のコロナとなり、キャッシュ的に無理して店舗拡大していた所は致命的なダメージを受けています。

雇用調整助成金も店舗を拡大している場合は、売上だけ見ると減少していないため、適用されないケースも出ています。

キャッシュがある宿泊企業が残り、追加借入を行っても返済の見通しが立たない宿泊企業が撤退する。6月末になると、後者の数が爆発的に増えるのが宿泊業の現実です。

STAY HOMEで我慢した後、7月や8月以降にようやく国内旅行しようとした時には宿泊する施設がない、もしくは宿泊運営企業が寡占化することで非常に高い価格帯でしか泊まれないということもあり得ます。

キャッシュがない企業がなくなり、キャッシュがある宿泊企業は、潰れた物件を買い、更に稼働していない今のタイミングで設備投資や修繕を行い、更に人材育成を実施することで、コロナ収束の後のお客様を迎える準備を周到にする。

今回のコロナによって、宿泊業界が最も早く構造変革を余儀なくされそうです。うちのホテルも生き残る為の手段を全て打っていきたいと思います。

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