バッチサイズを小さく素早く作る

「バッチサイズ」という言葉は、工場の生産ラインなどで用いる生産工学の分野で良く出てきます。

バッチサイズ:一回のオペレーションで処理する量

自動車生産において、アメリカのバッチサイズが大きい少品種大量生産の方法(大型の専用機でいっぱい作れば一個当たりが安くなる)に対して、日本のバッチサイズが小さい多品種少量生産のトヨタ方式(小型の汎用機で設定を素早く変えてどの部品も作れるようにする)が立ち向かい、ユーザの需要変化への対応スピードで勝っていったことは有名な内容です。

日常生活では誰もがバッチサイズが大きい方を選ぶ

ただ、日常生活においては誰もがこのバッチサイズが大きい方法(少品種大量生産の方法)でオペレーションを回す事が多いのです。

例えば、「封筒に宛名ラベルと切手を貼り、お知らせの書類を入れ、封をする作業」があったとして、300枚くらい送らなければいけないとなったら、誰もが「お知らせを作る作業」「封筒を曲げる作業 300回」「ラベルを貼る作業 300回」「切手を貼る作業 300回」「お知らせを入れる作業 300回」「封をして糊付けする作業 300回」に分けて、一人がひたすら同じ作業をする方が効率的と考え、そのように分担して作業すると思います。

確かに過去経験のあるプロセスであったり、その内容が作業中に変更しない(宛先、お知らせ内容、切手の値段が変わらない)場合には非常に有効です。

しかし、顧客のニーズがハッキリとは分かっていない商品やサービスを作る時には、かなり危険なやり方でもあります。

例えば、先程の封筒にお知らせを入れるケースにおいても、初めに作ったお知らせの紙のサイズがもし封筒よりも大きくて入らなかった場合、それぞれの作業を専業で進めてしまっていると、お知らせを入れるまで気づかずにラベルと切手の貼った封筒を無駄に300枚作ってしまうことになります。すると、初めからやり直しです。結果、リソースと時間を大幅に失ってしまいます。

一人で黙々資料作りは自己満足が暴走しやすい

コンサルティングファーム時代の初めの頃、その現象によく陥りました。お客さんに会わずしてオフィスに籠って資料を何百枚も徹夜して作り、自己満足感たっぷりの状態でお客さんに見せて全て不要なページだったことがわかるといった経験です。

(初めはお客さんが理解してないからじゃないかととんでもない勘違いをしていましたが、、)そもそも商売を理解していなかったのは自分でした。崇高(と勝手に勘違いしていた自己満足的)な考え方をお客さんは買うのではなく、お客さんが欲しいと思っている考え方を買うのです。当たり前です。(なのでコンサルティングファームにいたとしても、お客さんに会わずに資料だけを作っている人がいればそれは完全なるモグリのコンサルです。)

新しいサービスを作る時はバッチサイズは小さく素早くが吉

上記を踏まえると、顧客のニーズがハッキリと分からない新しいサービスを立ち上げるベンチャー企業においては、バッチサイズをなるべく小さくして、完成品を一気に作りこもうとしないことが重要となります。

(物足りないと感じても)まずは簡単な手書きの資料を作ったり、デモ機を作って、適切な人(お客さん候補)に見て貰ったり、触ってもらってフィードバックを貰う、そこから何を先に作りこむべきか、何は後回しにする(後付けで事足りるもの)かを把握し、変なベクトル(自己満足感を満たす方向)に突き進んでいかないように積み上げていくことです。

手書きの資料を作るだけでも、そこから色々な人から意見を貰えたり、新しい視点を得ることができます。

自分一人で抱え込んで作り込み過ぎるもう一つのデメリットとして、愛着が沸いてしまい軌道修正や変更をするのが躊躇われることです。

なるべく短い(けど意味のある)プロセス単位で切って、なるべく早く顧客に実際に体験してもらう事が無駄なリソースと時間を生み出さない生産性の良い方法になります。

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