言ってしまえば当たり前に思えるのですが、「条件が変われば、答えも変わる」という事実は意外と分かっているようで分かっていない気がします。どういう事かと言うと、世の中の情報の中には、条件が書かれていない「答え」のみが書かれていることが往々にしてあるのです。
例えば、「多様な人材がいる会社は良い組織だ。」とか「退職率が少ない会社は良い会社だ。」とか「会社内のコミュニケーションは頻繁に取った方が良い。」とか「住宅ローンを組めば税金対策にもなりお得。」とか「朝早起きの人は仕事が出来る。」など、どの内容もそれ自体は間違ってはいません。
ただ、何れもそうしたタイトルには何の条件も書かれていないのです。条件の書かれていない答えだけを頭にインプットしてしまい、何気なく会社の採用時に「多様な人材を採用することは良い事ですよね。」とか刷り込みのように発言してしまったりするのです。
実際に、多様な人材を採用して良い場合は、「市場変化が激しい業界」×「サービス・商品が複数人・複数レイヤーの人の連携でしか提供できない」時だけです。例えば、私が運営している「ホテルの清掃事業」においては「市場変化も少ない」×「個別にサービスを完結できる」ため、多様な人材は必要ありません。
一方、事業形態の異なるFRINGEでは提供サービスがアプリや業務用システムだったりする為、「市場変化が激しい」×「企画、PR、デザイン、プログラミング、カスタマーサービスなど複数の機能が必要となり、1人では弱い部分が出る」ので、多様な人材は有効となります。
退職率が少ない会社が良い会社なのも「市場変化が少ない」業界の時のみです。「市場変化が激しい」業界であれば、状況に応じて必要な人材が激しく出入りしている方が会社としては最適な状態となります。
会社のコミュニケーションも同様です。連携の必要なサービスであればコミュニケーションは密に取るべきですが、単独でアウトプットの価値を出す仕事の場合は、会社でわいわいコミュニケーションを頻繁に取られたら集中が切れてしまい、アウトプットが出せずに大損害となります。例えば、クリエイティブな業種であれば尚更です。
どうしても、ニュースアプリや記事など初めのタイトルが目を引くものでないと人は直ぐにスルーしてそのページから離脱してしまう為、「条件」は書かずに、強烈な形で「答え」だけタイトルに書きます。
そして本文を良く読むと「条件」も書いてあるのですが、大概の人はそこまで細かく読み切らずに、タイトル部分の「答え」だけを頭の中に入れてしまうのです。「スマホ時代にPCは必要ない。」みたいな記事タイトルを入れておけば、条件など気にせずに、「やっぱり最近はPC持ち歩いて仕事するのも時代遅れだよね。」といった「答え」だけで他は何も考えず(思考停止状態で)一般論のように発言する人が大勢出てきてしまいます。
「条件」→「関数(論理式)」→「答え」という意識を常に持ちながら、「これは答えしか書いてないな」とか、「これは条件が何の時の答えなんだろう」と考えるようにすれば、変な思い込みや間違った一般論に振り回されないかと思います。