前回の記事の「無名なものをブランド化できるか」の続きで、実際にどのようにブランド化をしていけばいいのかを考察してみようと思います。
まずは、「1.識別・差別化」です。
「無名なもの」をブランド化するには、まずは「知ってもらう」ことが必要になります。
本来一番良いのは、実際に食べて貰ったり、サービスを体験してもらって「知ってもらう」のが一番理解される事ではあるのですが、「無名なもの」を生活者の人がいきなり試したりすることはありません。
なので、一般には新聞や雑誌、テレビなどの広告、オンラインで言えばインターネット広告やSNS発信などによって、宣伝をすることになります。これまで自分もそういう宣伝手段や手法に関する事が「ブランディング」だと勝手に勘違いしていました。
しかし本当に重要なのは、そうした宣伝手法ではなく、ユーザーがサービスを体験する前に何であるかを伝えられる為の「自己紹介の内容」だったのです。英語で言えば、「Who We Are」です。
この「Who We Are」は他社との違いが分かりやすく表現することは案外難しく、例えば「我々は美味しいコーヒーショップです。」と宣言しても、近くの喫茶店なのか、駅前のスターバックスなのか、ドトールなのか、はたまた輸入のコーヒー豆店なのか、全く識別できません。「識別・差別化」できていない「Who We Are」であれば、ただの機能となってしまい、他の店がやっても同じような内容のコモディティとなってしまいます。(※コモディティ:一般化したため差別化が困難となった製品やサービスのこと)
なので、下記のような視点とフレームで一度自社の製品やサービスを色々な方向から再認識し、再定義する必要があります。
1.文化的な視点
-現在、どのような時代背景があるか
-人々の生活において、あなたの提供サービスの事業領域はどのように変わってきているか
-あなたが提供しているサービスは、人々にどのような役割を果たしてきているか
-あなたの会社(事業)がそうした提供サービスを必要とするユーザーを助けているとしたら、それはどのような部分か
2.ユーザー視点
-生活者はあなたの商品(サービス)に何を求めているか
-生活者があなたの商品(サービス)を利用する目的や価値は、時代と共にどのように変遷しているか
-生活者があなたの商品(サービス)を利用する目的や価値は、今後どのように変わっていくか
-生活者のニーズにもっと応える為には、どうすれば良いのか
3.サービス分類の視点
-あなたの商品(サービス)の存在意義は
-あなたの商品(サービス)は、どのように使われているか
-あなたの商品(サービス)領域の将来は明るいか
-あなたの商品(サービス)領域のトレンドは何か
-あなたの会社(事業)が、最も意識している競合他社はどこか
-競合他社と差別化できる強みはあるか(逆に弱みは何か)
4.自社視点
-あなたの会社(事業)の歴史はどのようなものか、なぜその歴史を築くことができたか
-どんな人々に愛され、一方で避けられてきたのか
-あなたの会社(事業)の理念は何か、その存在意義(ミッション)は何か
-現在のあなたの会社(事業)ことをどのように考えているか、会社の強みと弱みは何か
-あなたの会社(事業)の現在のブランドイメージは何か
-あなたの会社(事業)の資産は何か
まずは、上記の4方向からの視点で再認識することで、「Who We Are」をどう表現すれば、自分達の商品やサービスならではのものに理解されるかを考えるきっかけを作ることができます。
「この部分は他の会社でもやれるけど、この点は良いと思うし他の会社ではなかなかやれない、今後もうちはそうありたい」といった形で社内でも議論し、「Who We Are」を作ることができれば、ユーザーにとってだけでなく、社内のメンバーにも改めて会社の存在意義(ミッション)や事業理念を確認することができ、一つの判断基準や軸を作ることができます。
ここまで来ると、ブランディングはただのPRやマーケティングに留まらない、会社の事業戦略にも関わることだと理解できます。
次回は、定義できた「Who We Are」をどのように分かりやすく伝えて行くかの具体的な方法について、「2.ビジュアル化」の観点で深堀りしたいと思います。