私自身、コンサルティングファームにて大企業の経営戦略や成長戦略を策定してきた経験が、逆にベンチャー企業を立ち上げた際や父から継承した中小企業を運営する際に、ことごとく仇となりました。大企業用に緻密に策定した戦略手法はとても凄いもので、ベンチャーや中小企業でも当然活かせると思っていたからです。
勿論、結果的に全部が全部使えないわけではないですが、根本として「大企業」の強みと「ベンチャー」や「中小企業」の強みは全く異なる事を理解する必要がありました。
まず、「大企業」の強みは、圧倒的な戦力(お金、人材、ブランド力、土地、設備、販売チャネル)です。
一方、「ベンチャー」の強みは、圧倒的な勢い(決定のスピード、労働時間の長さ、モチベーションの高さ)です。
そして、「中小企業」の強みは、圧倒的な力を持つトップによって変革しやすい所です。
なので、戦い方も異なります。
大企業の本営で戦略を立てるときは、圧倒的な戦力がある前提で論理的な「広域戦」の戦略を考えれば良いです。
一方、そもそもリソースに限りがあるベンチャーや中小企業の場合は、まずは「局地戦」で勝利をしていかなければ、「広域戦」の戦略など一日うんうんと考えていても、それはただの「絵に描いた餅」になります。
大企業が幅広く持っている商圏の中で、薄くなっている部分に目を付けて、ベンチャーと中小企業は大企業に対して徹底的な「差別化」を行い、更に「リソースを集中」して獲得していく必要があります。
「差別化」や「集中」というのは、チャレンジャー側が実施する基本戦略になります。
ただ、大企業側は局地戦で完全敗北する前に「同質化戦略」を実施出来れば、上手い事スケールさせる事が出来てしまいます。なので、ベンチャーや中小企業は、局地戦の勝利をした後は、その勝利した商圏の中で、大企業も含め誰もついてこれない地位に直ぐに昇り詰める必要があります。
昨今、大企業からベンチャーに転職する人は多いですが、自分の見る限り、この「広域戦での戦略策定」をベンチャーにおいても同じように行おうとして上手くいかず悩んでいる方が多い印象です。
ベンチャーや中小企業では、まずは「局地戦での戦術策定」からの「局地戦での勝利、そして防衛戦」、そこからようやく「広域戦への戦い方」へシフトしていく必要があると考えています。
ただ、自分も陥った罠ですが、「広域戦での戦い方」自体が経験として染みつき過ぎてしまうと、なかなか「局地戦での泥臭い戦い」を出来ないということもあります。今は、私も会社の規模やフェーズによってその時その時に必要な戦い方をしなければならないと思えるようになりましたが、脳内シフトするにはとても時間がかかりました。