KSFやKBFを意識すること

コンサルティング時代に学んだワードとして、「KSF」や「KBF」があります。

KSF=Key Success Factor(成功の鍵)
KBF=Key Buying Factor(最重要購買決定要因)

のことなのですが、当時はそれほど大した意味として理解していませんでした。各パラメータの中の重みが一番重い(重要な)項目がKBFとかKSFなんでしょ?と思っていました。

あるエンジニアリング企業のコンサルティング事例で、実際にどのように使っていたかを挙げたいと思います。当時、そのクライアントが新規事業として分散型のエネルギー機器を開発しており、その商品を新規で売り出すにあたり、今後どのような部分に開発を注力し、更にどのような訴求ポイントで市場に売っていけば良いかを検討していました。

その際に利用した考え方が、「KBF」でした。その商品の購買を決定づける最重要項目は何かを見極めることで、開発や営業の指針にしようとしたのです。まずは商品の機能や仕様から項目を出し尽くしました。具体的には、「発電効率」「熱回収効率」「需要変動即応性」「静音性」「安全性」「耐久性」「メンテナンス性」「サイズ」「重量」「デザイン」「イニシャルコスト」「ランニングコスト」「商品ラインナップ」「環境性」などです。

この項目ごとに開発中の機器の実数値をあてはめ、更に競合のエネルギー機器も横並びにすることで、現状の優劣をつけました。それを持って、市場つまり実際に使う需要家の所に伺い、もし購入するとすれば、何が一番重要な項目かを聞きに回ったのです。

結果、当たり前ですが、「イニシャルコストが安いのがいいです」という意見が多く、「KBF=イニシャルコスト」となりました。

そんな感じでしたので、KBFなんて大層にヒアリングして何百万円もかけて調べなくても、小学生でも初めから分かる大した内容ではないと思っていました。しかし、実はそうではなかったのです。当時のKBFの見つけ方が間違っていただけだったのです。仕様書を並べて、お客さんにどれが重要ですか?と聞いて、それがKBFですというロジックが阿保すぎたのです。

例えば、昔バブル時代に流行った六本木のヴェルファーレというクラブがあります。そのクラブを創った当時グッドウィルの会長が言ったKBFは、「常に箱を満員にしていること」だったのです。先程のコンサルティングの手法であれば、各主要項目を「内装」「外装」「価格」「イベント企画」「音響」「飲食の質」「ゲスト」などと挙げて、その中から重要となるポイントを選定する形になります。

ただビジネスを創る人の視点では、「人は人が集まる場所に価値を見出す」(中身ではない)というKSFを見極め、後付けで各主要項目を鍛えるというスタンスを取ったのです。

ベンチャーや中小企業といったリソースが特に制限される状況では、特にこのKSFやKBFの発想が必要となります。このビジネス、サービス、商品の一番大事な最初の倒すべきドミノはどれか、そのドミノさえ倒れてしまえば、あとは自然と倒れてくれる。これこそが本当のKSFであり、KBFになります。コンサルティングやビジネス系の教科書のワード(指標)を如何に、事業創出する場合のワードに翻訳(昇華)させられるかが鍵となる気がしています。

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