人数が増えると起きるジレンマ

会社においても、まちづくり団体などの公共グループにおいても、人が2人以上集まればそこに組織が生まれます。更に人数が3人以上になれば、急に色々な組織ならではの問題が発生してきます。50人、100人、300人、1,000人、人数のサイズによって問題も多く、大きくなっていき、難易度もグングン上がっていきます。

人が集まると必ず起きる現象例を出してみます。

「自分一人くらいサボっても、たいして影響はないでしょ。」と全員が思い始める

これは「リンゲルマン効果」と言われ、フランスの農学者のマクシミリアン・リンゲルマンが綱引き、荷車を引く、石臼を回すなどの集団作業時の1人当たりの仕事量を数値化して分かった行動経済学の一つです。実験の結果、一人の時を100%とすると、2人で93%、3人で85%、4人で77%、5人で70%、6人で63%、7人で56%、8人で49%と一人当たりの仕事量・アウトプットがどんどん低下していくことがわかりました。つまり、ある仕事やプロジェクトを多い人数で行えば行うほど、一人ずつが適度にサボり始め、結果的にパフォーマンスが落ちてしまうという事です。

これに対して、「一人一人自分事だと思って、やって欲しい」と説教したところで、効果はありません。(説教している人がちゃんとやっている場合は効果があるかもですが、やっていない場合は逆効果しかありません。「お前がな。」と心の中で思われてしまいます。)

唯一の解決策は、仕事やプロジェクトの単位(守備範囲)を明確にして、人数を少なくすることです。そして、その少なくした人数のメンバーで全員野球できるように上手くプロジェクトを進める事です。例えば、各メンバーに独立の役割を持たせて、メンバー全員で共有できる場を作るなど、メンバー全員が参加している感をつくることが重要です。そうなれば、各メンバーがやっている事ややっていない事が明確になり、自ずと「自分事」として取り組むようになります。

「〇〇さんが言っているから、それが正しいんでしょ。」と全員が思考停止する

人は権威に弱い生き物です。肩書や経験などの履歴書情報が凄かったりすると、この方が言っているんだから間違いないでしょと、あまり内容を分かっていないけど、ふむふむといってOKを出してしまう事は良くあると思います。ただし、これは中々防ぐことは難しい気がしています。正しい場合が多いと、その方が効率的であったり、スピードも上がるからです。

ただ、ちょっと「?」と思う時は、なるべく「ゼロベースの議論」が出来る環境をつくることが重要です。普通に、「それは何でそうなるのですか??」とシンプル質問ができる環境があれば、落とし穴に落ちなくて済む確率が上がります。

「みんながこういうやり方でやっているから、それが正しいんでしょ。」と全員が思考停止する

周囲の人々と同じ選択を行い、安心感を得たいという同調性の欲求は会社だけでなく一般的な社会の中で常に起こります。行列の出来る店に行列ができるのも、人が並んでいれば間違いないでしょという安心感から思考停止になっている現象です。

これはある種「誘導」することが可能です。コンサルティング業務をしていた時も、ミーティングの初めは「外部のコンサルティング会社が何を変えられるものかね?」とクライアントが胡散臭いものを見る目で対応されていたのが、クライアントのメンバーの中のキーマンに絞って価値を出し続けていくと、キーマンが「これは一緒にやった方が良いな」とシフトチェンジした瞬間に、周りのクライアントのメンバーも一気に「勝ち馬」に乗りたがるかのように、手のひら返しばりに協力してくれるようになります。

つまり、仕事の中で良くない習慣が当たり前となっていたら、それは良くない習慣だよねとキーマンに当たる人から徐々に突破させていくと、一気に良い習慣に全体がシフトチェンジできます。同調バイアスは、「誘導」によって活用するのが良いです。

「△△さんや□□さんよりも自分の方が仕事しているし、結構オレ仕事してると思うんだよな。」と勝手に自己評価し始める

これも良く起こります。結局、人は目に見える周りと比較してしか評価できないことが多いからです。まずは採用やメンバー選択において、メンバー全体の平均値を上げられるようにするのが最重要です。

また、自らが相対評価で驕ることなく、ひたすら無心にアウトプットする姿をメンバーに見せることです。これによって、比較対象のレベルが上がるので、全体としての目標基準が上がります。

それが難しければ、客観的に評価できるような項目を細かく作成し、メンバー間の相対評価ではなく、一つの絶対評価を作るのも一つの手ではあります。ただ、この方法はより具体的な内容の項目でないと効果が発揮されないような気がします。

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