資金調達とバーンレート

清掃会社の立ち上げからちょうど6年が経とうとしています。

東京のFintechベンチャーが何億、何十億円という巨額の資金を紙の事業計画書だけで出資によって調達している様子を横目に見ながら、毎年の少しばかりの収益と借入によって、少しずつ少しずつ会社の土台を作っていきました。

昨年はコロナ禍によってホテル清掃の稼働が一気に下がる影響をもろに受けてしまいましたが、経常利益としては昨年も増進することが出来ました。本年度、借入も全て返済予定にて、そこからは利益剰余金を軍資金としながら、じりじりと成長投資していこうと思っています。

一方で巨額の出資を受けて、凄まじい成長速度で持って、ナンバーワンの市場を独占するというスタートアップのやり方は憧れましたし、ずっと羨ましく見てきました。

ただ、この6年が経つ中で、同時期に立ち上げた何十億円も出資を受けたスタートアップがことごとく赤字を垂れ流し続け、残キャッシュが残り1年そこらになり、内部の組織が分解し、二束三文で売却という事例が具体的にいくつか出てきました。

当然、スタートアップ自体、成功もあれば失敗もあるとは思いますが、上手く成功した事例というのは本当に一握り(数%ほど?)なのかもしれないと感じています。

何十億円も調達したスタートアップは、皆本当に優秀なメンバーばかりです。調達によって更に優秀なメンバーを採用して、とんでもない数の優秀軍団になっている会社が多くあります。ただ、優秀なメンバーがどんなにいっぱいいても、新しいビジネスの立ち上げが上手く行くかどうかは別だったのです。

ここでいう優秀なメンバーとは大企業など既に確立したビジネスモデルや組織における優秀さであって、100→1000にする優秀さなのです。0→1や1→10の優秀さとは異なるのです。

この辺りは、実際に目の当たりにして初めて自分も気づきました。返済しなくて良い大きな資金がドッと入ってきてしまう(通帳にガツンと数字が入ってしまう)と、この優秀な人をいっぱい採用してしまう流れとなり(気分的にイケてる人を部下として取れる嬉しさもあるのかもです)、更にその優秀な人達が働きやすい職場を作ろうと、馬鹿に高いオフィスに引っ越ししてしまう傾向があると思いました。

当然、資金の特性上、最速で上場まで駆け上がるには「とにかくイケている人材を取れ」という号令になるのですが、残念ながらその辺りのイケてる人材の目利きがベンチャーキャピタルや初めてベンチャーを行う起業家には出来ません。

間違った優秀な人材をいっぱい取って、高いオフィスに引っ越した瞬間に、毎月のバーンレート(キャッシュアウト)が跳ね上がります。

すると、いつの間にか売上が上がる前に始めに調達したお金がどんどん無くなっている事に気付くのです。

ただ、個人のお金と一緒かもしれませんが、一度生活水準を上げてしまっていると、本当に残キャッシュがヤバいというところまで、まだ大丈夫なはずだと突き進んでしまうのです。

汗水して作った資金と、事業計画と過去の履歴書だけで調達した資金では、コスト感覚が変わってしまうのかもしれません。年末ジャンボ宝くじが当たってもこれまで通りの生活を普通に出来るかどうか、多額の資金調達をしたベンチャー企業が初心を忘れずに成長するには重要な事な気がします。

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