前回の「人数が増えると起きるジレンマ」に挙げた「4.△△さんや□□さんよりも自分の方が仕事しているし、結構オレ仕事してると思うんだよな。と相対評価し始める」にもあるように、人は概して絶対評価ではなく「相対評価」によって判断することが多いことに気づきます。
その相対評価によって、人は勝手に劣等感を感じたり、優越感を感じたりします。
この合理的ではない判断というものに、人間はどうしてもして抗えないのかもしれません。
例えば、普段行くスーパーよりも少し遠いスーパーでキャベツ200円のものが100円で売っていたりすると、並んででもわざわざ行くにも関わらず、洋服をデパートで買うときに4万円の服が、隣のデパートに行けば3万9,900円で売っていたとしても、隣のデパートまで行かずに4万円の服を買ってしまう人が殆どです。
絶対評価で言えば、同じ差額の「100円」です。
ただ、人間の脳みそはポンコツなのか、ベースの金額との比率が小さくなると、大した金額ではないと大概の人が勝手に判断してしまうのです。マンションや戸建住宅を購入するとなると、更にそれが顕著になります。金額が数千万円となると、追加機能が50万円で付けられますと言うと、たいして内容の検討もせずにOKを出す人が大勢います。50万円の買い物なんて通常簡単にしないにも関わらずです。
他にも、相対評価で判断するシチュエーションは多くあります。例えば、「合コン」です。男性3名、女性3名で合コンをしたとして、タイプの似た男性(学歴、職種、収入)2名と全くタイプの異なる男性1名がいたとします。タイプの似た男性の2名は、一人は容姿が多少整っている、もう一人は少し不細工だとします。全くタイプの異なる男性も容姿は整っているとします。すると、比較の出来ないタイプの異なる男性1名を選ぶよりも、比較の出来る2名のタイプの似た男性の内の容姿が良い方を選ぶ確率が高いのです。確実に判断の出来る方(安心感がある、納得感がある)を人間は選択しがちだということです。
相対評価で判断している、もう一つの分かりやすい事例が「生活水準」です。人は一度手にした生活水準を落とすことができません。なぜなら、以前の自分の生活状態が相対評価の基準となってしまうからです。車などはいい事例です。昔から思い入れのあった「ポルシェ」を購入した方も数年経つと、「フェラーリ」に乗り換えてしまいます。ただ、そのあとに「プリウス」に乗り換えるという事はそうそうありません。相対性の連鎖を断ち切れない限りは、持てば持つだけ今よりも相対的に上のものを更に欲しくなる仕組みです。
宝くじで急にお金が入った人もこの原理です。お金が入った瞬間に基準(生活水準)を勝手に上げてしまいます。その後、お金がなくなっても生活水準を下げることが出来ずに破産する人が多いのもこの為です。アメリカのNBAプレイヤーも引退して5年以内で選手の60%が破産しています。
ただ、100人に1人くらいの割合で、相対性の連鎖に巻き込まれない人もいます。芸能人で言うと、カズレーザーさんとかオードリーの春日さんのような人でしょうか。ただ、そういう人は滅多にいません。
この相対評価のポンコツ脳みそを上手く利用して、ビジネスを考える事も出来ます。例えば、商品やサービスの価格付けです。ある商品を一つの価格帯だけで売るのではなく、「松」「竹」「梅」を用意するのです。そして「竹」に当たる部分の利益率を高くなるように設定しておきます。そうすると、人は「松」「竹」「梅」とある場合、相対評価のポンコツ判断で8割が「竹」を選択する為、利益を多く獲得することが出来ます。一つの価格帯だけしか出しておらず、中々売れない商品がある場合は、3パターンのバージョンを作る手は効果的です。