平時と急時の見極め

「中長期的かつ継続的な集中(領域絞込)作業に入る」宣言を前回のブログ100個目の記事でしましたが、これは短期的で急ピッチ系の作業は重要でないという意味ではありません。

継続的な平時の運営と短期的な急ピッチに追い込む急時の立ち上げ(変革)はタイミングに応じてどちらも重要です。

急になぜそんなことを思ったかと言いますと、一時期流行っていたスタートアップ系企業の多くで「尻すぼみ感」を感じるからです。急時の立ち上げを行っていた2~3年、事業運営のステージまで乗り上げていない状態(営業利益で黒字が出ていない)にも関わらず、いつの間にか(普通の大手企業のような)平時運転をしている(そしてそのままキャッシュを喰い続けている)企業が多い印象を受けるのです。

そもそもスタートアップ企業の良さは、メンバーが少数精鋭で頭の中にあるものを直ぐにサービス化したり、プロダクト化することだと思うのですが、多くのスタートアップ企業が大きな資金調達をしてしまうと、大手企業のエリートサラリーマンを外から数多く雇い、いつの間にやら、大手企業と同じような組織構造・風土になり、頭の中にあることを直ぐにサービス化できるどころか、至る所で会議や稟議が発生し、全面的に目に見える動きやアウトプットがストップしてしまう現象が起こります。

調達したお金もあるので、給料も普通に支払えてしまい、経歴情報だけでかなり高給を貰っているスタートアップ企業の人もいるくらいです。(前職の金額ベースでお願いしますという人もいます。そういう人はスタートアップという名のステップアップ企業と思っているのでしょう。)

大手企業のエリートサラリーマンの良さは、「平時の安定感と合理性」です。会社は明日も存続するし、お客さんも9つにセグメント出来るくらいにリスト化できる。そんな条件の上での最適化の速さと仕事のクオリティの高さは一級品です。

ただ一方で欠点となるのは、「急時の見極め」が難しいことです。このタイミングでは絶対にやりきらないといけない、徹夜してでも踏ん張らないといけない、ここを超えれば平時になれるからという感覚や経験があまりありません。急時のタイミングが分からないと、そのまま常時、平時の形で対応してしまい、ここだというタイミングを逸してしまい、現状ステージのままで推移してしまうリスクがあります。

急時のタイミングはその瞬間しかないからです。そのタイミングを超えたら、どんなにその後に仕事を積み上げても間に合わないのです。ただ、事業収益が既に回り始めていて、急時の立ち上げを行わなくても問題ない状態までステージが進んでいたら(そもそもその時点でスタートアップ企業ではないですが)、何も問題はありません。却って、大手企業のエリートサラリーマンの力が存分に発揮されることになります。しかし、まだ事業の立ち上げ最中であれば、状況に応じて急時の立ち上げ(ブースト)が必要になり、そのブーストをかけるタイミングの見極めが非常に重要になります。

一方で、自立型のベンチャーエリートの良さは、「急時の勢いと非合理性」です。お客さんがいない状態でも、一つの市場をゼロから作り出してしまう圧倒的な勢いがあります。そして、プロダクトもデザインもコンテンツも自分一人で作れてしまいます。

ただ一方で欠点となるのは、「平時の状態に飽きる or 耐えられない」ことです。エリートサラリーマンと違い、制約条件が厳しくても突破する力はあるものの、突破してしまって事業として平和に運営しなければいけなくなってしまう(変革が必要なくなる)と、急につまらなく感じ、飽きてしまう傾向があります。ベンチャーの創設から関わる優秀な立ち上げタイプは、事業が立ち上がり回り始めると、その恩恵を多く得ないまま、次の戦場に行ってしまうことがままあります。

このような2種類の人のタイプからも、スタートアップ企業で上手く「急時」の立ち上げを行い、そして事業収益が出始めた頃に「平時」の運営をエリートが行い、更に必要に応じて「急時」の第二段ブーストをかけて成長を加速させる、といった継続的な成長軌道に乗せる仕組みを作ることは、(段階毎に人が辞めていく為)それほど容易なことではないのかもしれません。

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