最近まで自分自身も「新しい革新的なビジネスアイデアを思いつけば、ベンチャー、大企業問わず、成功する」と勘違いしていました。
実際に社会人1年目で戦略コンサルティングファームに入った時の一つの動機として、大企業が参謀として雇うコンサルタントの綿密かつ壮大なビジネスアイデアの作り方を学べることがありました。そして、その後のどんな業種においても汎用的にアイデア作りが出来、成功できると思っていました。
確かに、知見の少ない業種においてもアイデア作りを効率的に行う事のできる方法論は学ぶ事はできました。例えば、論理ツリーや縦軸・横軸を利用して、(新規・既存含めた)アイデアを出し尽くしたり、他社企業のベンチマークを行う事で効率的な情報の収集・収納ができるようになりました。
大企業でも活用できるアイデア出し尽くし方法や情報整理方法があれば、ベンチャーや新規事業においても十分なアウトプットが出せるだろうと、コンサルティング会社から卒業した後、意気揚々とベンチャー企業に入りましたが、全く上手くいきませんでした。
アイデアを整理する自体が価値と思われる大企業とアイデアを整理したところで1円の売上にもならず価値にならないベンチャーとでは目的が異なったのです。
アイデアや企画自体は1円にもならない
アイデア自体はそれほど重要ではなく、アイデアをプロダクトとして市場にぶつけ、そのフィードバックを受けて更にそのプロダクトが革新してくこと自体が重要だと気づいたのです。
つまり重要なのは、
1.アイデアを練ること
2.アイデアをプロダクトとして形にすること(初めは作りこまなくてOK)
3.そのプロダクトを人に使ってもらってフィードバック(定量的・定性的)を貰うこと
4.そのフィードバックからプロダクトを改善すること
5.3→4を細かく素早く繰り返す
6.3→4を何度も繰り返しても結果が出ない時は、方向転換(ビジネススキームを変える、市場を変える、プロダクトを変える等)を決断すること
だったのです。
正直アイデア自体は大企業の企画部署で山ほど積みあがっており、それに優先順位をつけて(デューデリジェンスして)会社として実施するかどうか決めているだけなのです。
素晴らしいアイデアが浮かんでもそれは大概他で考えつくされているものだと理解した方が良いです。それよりもいち早くその素晴らしいアイデアを形にして、ユーザからフィードバックを貰っている事の方がよっぽど凄いのです。
アイデアをパクられたから負けるのではない
アイデアを最小限のプロダクトとして世の中にリリースすると、「パクられる」のではないかとビビりますが、パクられて負けるのであれば、ビジネス上どのタイミングでリリースしても負けるという事です。
実際、スタートアップや小さい企業のプロダクトリリースなんて正直誰も見ていません。レーダーに引っかからないレベルで着実に顧客の声をプロダクトに反映し続けて、その市場における知見をためていくのです。
ある程度、ユーザが付いてきてビジネススキームとしてチャリンとなり始めれば、どこかのタイミングで大型の広告やPRを打ってしまう手はあります。ただ、その時には新規ユーザだけでなく他社企業にも晒される事になりますので、プロダクトが間違っていないという実証はそれまでにある程度つけておかなければ非常に恥ずかしいことになります。
市場とプロダクトを擦り合わせたアジャイル開発を如何にステルス的に高回転で始められるか、素晴らしいアイデアが浮かんだ時に考えることはその一点になります。