アフターコロナと宿泊業

新型コロナウイルスの緊急事態宣言が全国で解除され、暗澹たる自粛ムードが少しずつ解除されつつあります。

ただ、宿泊業から見える経済は、解除後の6月度の方が酷い状況というのが現状です。休館しているホテルや旅館も多く、休館から閉館になる宿泊施設は6月から本格的に増えるものと思われます。3月から6月にかけて売上が殆どゼロに近い宿泊業において、セーフティーネットでの借入分は殆どが消化されてしまっているのが現実です。

複数店舗を運営する中堅ホテルチェーンは今瀬戸際

実際に、40店舗ほどビジネスホテルを展開しているホテルチェーンさんとも話しましたが、個別店舗のキャッシュフローは既に5月末時点で行き詰っており、本社からの毎月の借入がなくなれば、その瞬間にキャッシュアウトになる状態です。7月には60%は稼働が戻らないと限界を迎えてしまうのが現実ですが、今の所、出張や観光の宿泊需要は見える気配がありません。

助成金を頼るにしても、ある程度の客室数がある宿泊施設の場合、毎月の固定費は1,500万円以上かかってしまうので、持続化給付金200万円、家賃補助も1ヵ月100万円ほどでは、全くまかなうことができません。

そうなると、6月末の時点でかなり多くの宿泊施設が閉館してしまう可能性があります。
7月末からの「Go To キャンペーン」の施策は多くの施設にとって、正直間に合わない気がします。

事業運営者が直ぐに別の方に引き継がれれば、宿泊施設の機能が継続されますが、現状全ての宿泊施設が上手く引き継がれるとは限りません。上手く引き継がれない場合、1年も経てば配管は錆付き穴が空きますし、建物としての機能はゼロになってしまいます。一つの施設でも廃墟となってしまうと、温泉街などの施設群で形成される観光地では致命的なイメージダウンとなります。

今後の宿泊業の在り方

こうして見えてくる宿泊業の今後の展開としては、過剰供給となった施設数が半分ほどに集約され、残った宿泊施設がそのエリアにおけるお客様の必須の目的に応えていく代表となるのではないかと思います。(そして現在有象無象にある宿泊予約サイトも同様に2~3つに集約され、マス向け旅行代理店も集約、自社での発信がより重要となっていくでしょう。)

その中で、北海道などエリアの魅力がある場所は、マイクロツーリズムが上手くはまるエリアもあるでしょうし、流通や建設など仕事上一定期間滞在する必要のある場所は、インフラ宿泊が必須の目的になるエリアも出てくるでしょう。

そうしたベースニーズにプラスして、出張→観光→イベント(コンサート)の順番で少しずつ上乗せ分が復活していくかと思います。ただ、上乗せ分は早くても6月中旬以降となるでしょうし、増加の幅は思ったよりも大きくない可能性が高いです。

エリア別に求められる存在意義と提供価値

6月以降、各エリアにおける存在意義をそれぞれの宿泊施設は問われることになり、そのエリアにおける必須ニーズに対してサービス内容を変えていく必要があります。

例えば、朝食サービスをコロナ対策として簡素にすべきか、異なる形で新しいメニュー、提供方式にすべきかどうかは、各宿泊施設の存在意義によって変わってしまうのです。

コロナを気にしなくても良い時代になるまでは、このベースニーズで何とかキャッシュが回るようにコスト調整を行い、エリアの代表として残り切るしかありません。星野リゾートがやっていることを真似すれば良い時代は既に終わっているのです。

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